2010年10月20日水曜日

asahi shohyo 書評

天才だもの。—わたしたちは異常な存在をどう見てきたのか [著]春日武彦

[掲載]2010年10月17日

  「天才を語ることは楽しい。人間がどこまで異常になり得るのか(略)を語ることでもあるのだから」。精神科医の著者が、絵描きや詩人、文学者や漫画家と いった様々な表現領域の才人たちの「突飛(とっぴ)なサンプル」を、特有の視線で眺め回し、「天才とは何か」の考察を試みる。様々な"サンプル"から導き 出される論は、時として歯がゆさも伴うが、それこそが天才を語る難しさゆえだろう。「いかなる善人であろうと、天才について噂(うわさ)をするときには、 必ず心が濁る。邪(よこしま)な精神が活気づく」といった毒気をはらんだ言葉の数々が、考察の合間合間で魅惑的に輝いている。

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