2013年3月1日金曜日

asahi shohyo 書評

一四一七年、その一冊がすべてを変えた [著]スティーヴン・グリーンブラット [訳]河野純治

[文]谷本束  [掲載]2013年03月01日

表紙画像 著者:スティーヴン・グリーンブラット、河野純治  出版社:柏書房 価格:¥ 2,310

 15世紀、ヨーロッパで起こったルネサンスは人間性豊かな芸術と近代科学を生み、以後の世界を根本から変えた。大変革を引き起こしたのはたった1冊の古ぼけた写本。本と、発見した男の数奇な運命をたどる。
  問題の本は古代ローマの哲学者、ルクレティウスの著作。あらゆる事物は原子でできているし、魂は滅びる、人は幸福を追求すべしという主張は、当時のキリス ト教社会では殺されかねない危険思想。ところが発見者のポッジョはローマ教皇の元秘書。彼の時代、教会の腐敗はなはだしく、人々は抑圧的教義に支配されて いた。教会の中も外も解放を求めて爆発寸前、本との激しい化学反応を待つばかりだった社会状況が鮮やかに描かれる。
 面白いことにポッジョはラテ ン語文書の崇拝者ではあったが、社会変革など毛ほども考えてはいなかった。ライバルを誹謗中傷、金儲けに余念がなく愛人との間の子も数知れず。すこぶるつ きの俗物がたまたま見つけた偉大な思想が、本人も知らぬ間に次々波及してついに世界をひっくり返した。この世の壮大なる奇妙さに呆然とする。

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著者:スティーヴン・グリーンブラット、河野純治/ 出版社:柏書房/ 価格:¥2,310/ 発売時期: 2012年12月

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