旧暦ブーム到来? 七十二候、震災後に注目集まる
[文]宇佐美貴子 [掲載]2013年03月09日
自然と生活が密着した旧暦の基本単位である七十二候(しちじゅうにこう)。約5日ごとの季節の変化を、細やかに表現する七十二候が、東日本大震災以降、注目を集めている。
1年を四つに分けて四季。24に分けたのが、立春や啓蟄(けいちつ)などの二十四節気(にじゅうしせっき)。二十四節気を3等分したのが七十二候で、もと は中国伝来。たとえば啓蟄は「蟄(すごもりの)虫(むし)戸(と)を啓(ひら)く」「桃(もも)始めて笑う」「菜虫(なむし)蝶(ちょう)と化す」の三候 に分かれている。出来事そのままの候の名は「詩のカレンダー」のようだ。
昨年2月の出版以来、20万部を超えたのが「日本の七十二候を楽しむ」(東邦出版)。候に関連する詩歌や行事、野菜や魚介の挿絵とともに紹介してあり、季節を丸ごと堪能できる。
著者は詩人の白井明大(あけひろ)さん(42)。震災後、東京から沖縄に家族で移住した。被災地でボランティア活動しながら、「詩人である自分にできるの は、傷ついた自然の本来の姿を書きとめておくこと」と思い立った。書店のフェアをきっかけに口コミで広がっていったという。
和暦研究家の高月美樹さん(50)は、旧暦の元旦(今年は2月10日)から始まる手帳を2004年から自費出版してきた。今年、タイトルを「旧暦」から「和暦」に変えた「和暦日々是好日」(ルナワークス)は、口コミだけで現在4500部に。「日本の暦は昔からの知恵がつまった貴重なもの。震災後は問い合わせが絶えない。希望の色である黄色の表紙が一番売れる」
候ごとに季節を感じさせる読み物が更新されるスマートフォン用の無料アプリ「くらしのこよみ」も、11年11月以来、22万ダウンロードされている。
「ホトトギス」主宰の俳人、稲畑汀子さんは「人々が積み重ねてきた経験を映した旧暦は説得力がある。震災後、四季という基本に戻っているのでは」と話す。
この記事に関する関連書籍
著者:白井明大、有賀一広/ 出版社:東邦出版/ 価格:¥1,680/ 発売時期: 2012年02月
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