美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い [著]サンディ・ネアン [訳]中山ゆかり
[文]朝日新聞社広告局 [掲載]2013年03月20日
■作品が戻るまでの8年半、それは希望と絶望の繰り返しだった
1994年7月28日、フラン クフルトの美術館で開催中の「ゲーテと美術」展会場から、ターナーの代表作2点が盗まれた。作品はテート・ギャラリーの所蔵品で、保険総額は2400万ポ ンド(約37億円)。史上最大規模の美術品盗難事件とその奪還が始まった瞬間だった。本書の著者は、この奪還作戦の責任者をつとめた学芸員である。二部構 成で、第一部は長い交渉の末、作品を取り戻すまでのドキュメンタリー。情報提供者に翻弄(ほんろう)されながら、ロンドン警視庁美術特捜班やドイツ警察と 協力して状況を打開していく過程は、臨場感と緊迫感に満ちている。第二部は、美術館と学芸員がもつべき倫理観と現実問題との葛藤、過去の美術品盗難の事例 を調査・考察した論考からなる。昨今では、有名な美術品を盗んでも売却は難しい。にもかかわらず、なぜ美術品盗難は繰り返されるのか。映画や小説に出てく る美術品窃盗犯はヒーローのように描かれがちだが、実際には、盗まれた美術品は裏社会での「通貨」として使われているのだ。美術品犯罪の実状を訴え、美術 品とその価値をいかに守っていくかを考えさせる一書。
この記事に関する関連書籍
美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い
著者:サンディ・ネアン、中山ゆかり/ 出版社:白水社/ 価格:¥2,730/ 発売時期: 2013年02月
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