2009年4月7日火曜日

asahi shohyo 書評

バービー・ファッション50年史 [著]茅野裕城子、たいらめぐみ、関口泰宏

[掲載]週刊朝日2009年4月10日号

  • [評者]永江朗

■日本生まれのバービーは、いまは中国製が多い

  今年はバービー生誕50年である。1959年3月9日、この着せ替え人形は米マテル社から発売された。同社の共同創業者のひとり、ハンドラーとその夫人 が、ヨーロッパ旅行で見つけた人形、リリがそのルーツだった。バービーは発売当初、親たちから不評だったらしいが(セクシーすぎた?)、子どもたちは熱狂 した。これまで全世界での販売数は10億個以上とも。着せ替え人形の代名詞だ。

 茅野裕城子・たいらめぐみ・関口泰宏『バービー・ファッション50年史』は、関口のコレクションの写真を中心に、バービーの半世紀を振り返る本である。

 驚いたことがいろいろある。まず、バービーは日本生まれだったこと。マテル社は日本のメーカー、国際貿易に人形とそれに着せる服の製造を依頼したのである。本書には、当時を知る関係者の座談会も収録されている。

 1950年代の日本製品といえば、粗悪品の代名詞だった。しかしマテル社は労賃の安さに注目。安い分クオリティを上げてふつう よりちょっと高めに売る、というのが同社の戦略だった。バービーの服をデザインしたシャーロット・ジョンソン(美人!)は、帝国ホテルで1年以上暮らし た。

 その後、日本の労賃が高くなると、バービーは生産拠点を東南アジアに移し、いまは中国製が多い。今年、上海にバービーの旗艦店がオープンしたとか。

 初期バービーの大人っぽさにもびっくり。ツンとした美人なのである。しかも基本は水着姿で、着せ替えるためには服をオプション で買わなければならない。小物もいろいろある。この服や小物が当時の流行を見事に反映している。つまり、本物の大人の世界をそのまま6分の1サイズにした ところが、バービー成功の秘密だ。

 それにしても、幼い時から「流行は追わなければならない。商品は買わなければならない」と刷り込んじゃうんだから、アメリカの資本主義は大したものだ。これはずいぶんと巧妙な洗脳教育であるといえまいか。

表紙画像

バービー・ファッション50年史

著者:茅野 裕城子・たいら めぐみ・関口 泰宏

出版社:扶桑社   価格:¥ 2,500

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