平成落語論—12人の笑える男 [著]瀧口雅仁
[掲載]週刊朝日2009年4月10日号
- [評者]青木るえか
■寄席に行きたくなるのは文章の賜物か、落語家の力か
タイトルを見ればわかる通り、「旬の12人の落語家」について語った本だ。
落語界には興味があるので読んでみた。しかし読んでわかったが、これは落語のことをまったく知らない人が読んだ場合、ワケがわ からない。私は落語界に興味はあるものの落語はまるで知らない。聞かないし見ない。主に落語家のゴシップに興味があるだけだ。だから落語家の名前はよく 知ってるんだ。ここに出てくる落語家も全員知っている。立川談春は競艇関係の飲み会で会ってしゃべったことがある。ものすごくいい人で、談志の弟子とは思 えなかった。しかし、その後出した『赤めだか』を読むと、談志の弟子らしいイヤな感じ(私はイヤだけど落語ファン的にはもてはやされるのかもしれない)が ふんぷんと出ていたので「残念だ」と思っていた。
ちょっと落語を聞いている人には、とてもエキサイティングな落語家論なんではないだろうか。まず立川談春が論じられて、それも ちょっと「冷静な批判」ぽく書かれている。『赤めだか』以来、談春には厳しい気持ちなので、この「冷静な批判」が心地よく読める。でもそれが的を射てるの かそうじゃないのかはわからない。
この著者の文章にはちょっとクセがあって、するすると読めない。読みやすくないのは文章が下手という場合と、「見るべきクセ」 がある場合があって、この人は後者だろう。よく古典芸能関係の随想など読んでいると、このタイプの、妙に硬くて言い回しもところどころよくわからず、その わからないところをあえて説明しないという感じの文章にひっかかる。読みづらいのは勘弁してほしいが、こういうタイプの読みづらい文章は、不思議とアトを ひいたりする。味というものか。
読んだ中では、柳家喬太郎(きょうたろう)という人に興味が惹かれた。生で見てみたい。ただ、落語が面白そうな感じはしないんだけれど。それでも寄席に行きたいと思わせるのは、著者の文章の賜物なのか、それとも喬太郎という人の力なのか。
- 平成落語論─12人の笑える男 (講談社現代新書)
著者:瀧口 雅仁
出版社:講談社 価格:¥ 777
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- 赤めだか
著者:立川 談春
出版社:扶桑社 価格:¥ 1,400
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