カミシモ—神々が教える下々の成功のルール　[著]藤原和博とチーム「カミシモ」

[掲載]2009年3月25日朝刊

■もう一つの『夢をかなえるゾウ』

　著者は東京初の民間出身の公立中校長として５年間、杉並区立和田中で教育改革に携わった。落ちこぼれ対策のドテラ（土曜寺子屋）、成績上位者向けの夜スペ（夜スペシャル）、ＰＴＡに代わる地域本部の設立などユニークな施策で話題を呼んだ。改革の評価は「杉並区立『和田中』の学校改革」（岩波ブックレット）に譲るが、子どもでも大人でもない世代と接し「こんなことこそ教えたい」と感じて、若い世代向けに書き下ろしたのが本書という。

　とはいっても硬い教育書ではなく、笑いあり涙あり、神々が次々に繰り出す課題を主人公の「僕」がクリアして成長していく「ロールプレーイング小説」だ。

　理系大学を出て希望の電機メーカーに就職できたのに関連会社に出向させられ、今は全く想定外のツアー・コンダクター。不満タラタラ、神社で酔って眠った僕の前に、いきなり神様が現れ、神々の夜スペ塾が始まる。ボンデージ姿の女神、腹の出たメタボなゼウス、昨年ベストセラーとなった『夢をかなえるゾウ』に登場するインド神ガネーシャに関西弁を教えたという恵比寿さん。なぜか神々のキャラはみんなユルいのだが、「親殺しはすんだか」など課題は鋭い。問いと格闘するうちに僕は社会で生きていくうえで最も重要な答えを身につけていく。それが何かは本書の中で。