2012年6月28日木曜日

asahi shohyo 書評

オカルト「超」入門 [著]原田実

[文]青木るえか  [掲載]2012年06月29日

表紙画像 著者:原田実  出版社:講談社 価格:¥ 861

■怖ろしさのあまり吐きそう

 四十年ぐらい前には日本テレビ系列「木曜スペシャル」で、幽霊と UFOとネッシーと雪男を定期的に特集していた。キャトルミューティレーションなんてのもそこで知った。放送翌日は学校でも大騒ぎ。心霊写真も流行ってた し、親の撮った手ぶれ写真も「霊が!」と騒いだもんだ。とにかく大マジメにおどろおどろしくやってたんで、私なんか見たあと気持ち悪くなって寝込んだりし たぐらいだ。
 最近、かつての木スペのような番組が少ない。きっと「あんなものはインチキだ」という大人の分別が広がってやらないようになってる んだろう。しかしそういう番組がほとんどない今のほうが、オカルトを正面から信じちゃってる人の「深さ」が深まってる気がする(人数はさすがに増えてない と信じたい)。子供の頃にオカルト番組をいっぱい見ているほうが、大人になってオカルトモノにヤラレなくてすむんじゃないだろうか、と考えたりしている。
『オ カルト「超」入門』を読んで、子供の頃にUFOや幽霊番組を見た時の恐怖の気分がよみがえりました。あの頃に発表された円盤の写真とか宇宙人の写真とか、 今見るとマヌケなものが多い。いや、当時だってマヌケだと思わせた。しかしマヌケなところが、かえって怖ろしさを増すのだ。そんな事例が、後から後から紹 介される。宇宙人による拉致事件、アダムスキー教授、ロズウェル事件、介良事件、福来友吉博士と御船千鶴子、クロワゼット氏……こう書いてるだけで、怖ろ しさのあまり吐きそう。
 といっても、この本はオカルトを信じさせようという本じゃなくて、それらの身も蓋もない種明かしを全部書いてある。でも その書き方が、「おめえらこんなことに騙されてやんの、バーカ」的なものはひとつもなく、なんだか淡々としている。その淡々とした感じも恐怖に拍車をかけ る。いやあ、読んでいてこうドキドキした本は久しぶりだ。といって、素晴らしい本かっていえばそういうことではないが……。

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オカルト「超」入門

著者:原田実/ 出版社:講談社/ 価格:¥861/ 発売時期: 2012年05月

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