くつろぐ景観、町ぐるみで改良 福島・飯坂温泉
2010年4月5日0時15分
【動画】温泉地を訪ねる 福島・飯坂温泉
完成間近の旧堀切邸。先進事例として国土交通省幹部が視察に訪れた=3月29日、福島市飯坂町
■宴会型から個を重視に
「5年前と全く違った飯坂の風景になってきた。これからも住民とお客様のためのまちづくりを進めていきたい」
福島市の飯坂温泉で旅館を営む遠藤孝秀さんは3月29日、温泉街での式典でこう誓った。地域おこしを工夫している団体に贈られる国土交通省の「手づくり郷土賞」授賞式。「歴史といで湯」がテーマの街づくりが認められ、全国17の受賞地のうち、東北で唯一選ばれた。
遠藤さんが会長を務めるのが、「飯坂町周辺地域づくり協議会」。旅館、商工会、町内会などが協力し、町内一体で街づくりを進める組織として2006年に生まれた。
協議会は、温泉街を和風の景観で統一する活動を進めている。奥州3名湯の一つに数えられ、松尾芭蕉が立ち寄ったと伝わる地。歴史ある建物や橋が数多くあ るため、石畳風の舗装や景観に合った街灯を整えた。街路には花を植え、つぶれた旅館の前に一服できるベンチを設け、街並みを楽しめるように工夫した。
住民にも協力を依頼。自らの家や店舗を和風に衣替えする「まちづくり協定」を住民間で結んだ。建築物はコンクリートから木材へ、屋根には瓦、看板 は木製に、などとの約束事だ。強制力はないが、200万円を上限に市が費用を補助する制度もあり、改修の実績は40件超にのぼる。
飯坂はもともと団体客の多い歓楽温泉街で、景観への配慮は少なかった。団体客が着くと花火があがり、大型旅館になだれ込む。夜の2次会のスナックから翌朝のみやげまで、大型旅館内が一つの街のようになり、旅が完結した。
しかし、団体離れが進み、73年に178万人いた観光客は、今や90万人を割った。にぎわいを取り戻すには、個人客も楽しめるような街にする必要性に迫 られている。遠藤会長は「全国の温泉地がだめな訳でなく、横ばいや右肩上がりの地もある。歩いて楽しめる200メートル四方の空間を持つ地域がうまくいっ ているようにみえる」と話す。
温泉街中心地の共同浴場「鯖(さば)湖湯」そばに5月、地域ゆかりの豪商の「旧堀切邸」が開業する。当時の屋敷を再現し、足湯や手湯なども楽しめ る施設。更に11年秋には、かつて焼失した旅館跡地に新たな共同浴場「波来(はこ)湯」が完成予定。温泉街が取り組む施設整備は、一段落する。
これからは街並みを案内するボランティアガイドの養成など、飯坂の持つ人的な資源がより問われる。飯坂温泉観光協会の安斎忠作会長は「かつての宴 会型でなく、我々が観光客一人ひとりをもてなす心をいかに持てるか。飯坂の街なかに来てみたいと思えるものを増やしたい」と話す。(中川透)
0 件のコメント:
コメントを投稿