2010年4月11日日曜日

asahi hisashi inoue sanjo

「親子を超えて尊敬」 井上ひさしさん三女が会見

2010年4月11日20時48分

写真:井上ひさしさんの訃報(ふほう)を受け、記者会見で話す井上さんの三女・麻矢さん=11日午前11時16分、東京都台東区、金子淳撮影井上ひさしさんの訃報(ふほう)を受け、記者会見で話す井上さんの三女・麻矢さん=11日午前11時16分、東京都台東区、金子淳撮影

写真:井上ひさしさんが脚本を手がけた舞台「夢の裂け目」が上演されている劇場では、井上さんの訃報(ふほう)のお知らせが掲示された=11日午後、東京都渋谷区の新国立劇場、水野義則撮影井上ひさしさんが脚本を手がけた舞台「夢の裂け目」が上演されている劇場では、井上さんの訃報(ふほう)のお知らせが掲示された=11日午後、東京都渋谷区の新国立劇場、水野義則撮影

 9日に75歳で亡くなった井上ひさしさんが座付き作者を務める「こまつ座」(東京都台東区)の社長で三女の麻矢さん(42)が11日、都内の事務所で会見した。麻矢さんは「作品を読んでいただくこと、劇場に足を運んでいただくことが幸せですと言って旅立った」と語った。

 井上さんの容体が急変したのは9日夕方。昨年11月から肺がんの治療で入退院を繰り返していたが、抗がん剤治療などを終え、この日朝、神奈川県鎌倉市の自宅に戻ってきた矢先だった。

 自宅に戻った井上さんは、安心してウトウトしていたという。麻矢さんと妻のユリさん(57)、大学1年の長男(18)の3人が、井上さんの手をさすったり握ったり。「最期は静かに息を引き取りました。すばらしい作品を生み出し、親子を超えて尊敬できる人でした」

 井上さんは病と闘いながらも、次の作品への意欲は衰えていなかった。夏に上演予定だった沖縄をテーマにした「木の上の軍隊」は20年以上前から構想を温 めていた作品。「大量の資料を読み、頭の中でプロットを作っていた」。広島の原爆を題材にした戯曲「父と暮(くら)せば」の続編として「長崎のことを書き たい」とも話していた。

 肺がんに侵されていることが分かった昨年秋の舞台「組曲虐殺」は井上さんもお気に入りで、麻矢さんに「組曲虐殺が書けたから、もういいんだよ」と 笑いながら語ったという。ただ麻矢さんは「劇作家であり作家なので、次の作品を書きたくなるのが作家の業。やはり書きたいと思っていたと思う」と話した。

 こまつ座では、井上さんの作品を公演中の新国立劇場(東京都渋谷区)や、蔵書を寄贈した「遅筆堂文庫」(山形県川西町)など4カ所に記帳台を設けた。麻 矢さんは「次の世代に井上作品を引き継ぎたい」と今後もこまつ座の活動を続ける意向で、予定されている作品はすべて追悼公演という形で上演していくとい う。

 麻矢さんら遺族は井上さんの遺志を尊重し、告別式は12日に親族だけで営むことにしている。




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