2010年4月28日水曜日

asahi shohyo 書評

汝の目を信じよ!—統一ドイツ美術紀行 [著]徐京植

[掲載]2010年4月25日

  在日朝鮮人である著者は、東西ドイツ統一直後の1991年、初めて旧東ドイツ側に足を踏み入れ、かの地での「美術巡礼」を重ねていく。ナチス党員でありな がら、その前衛さゆえにナチスの「退廃美術展」に作品が展示されたノルデ。第1次世界大戦での過酷な経験と「汝の目を信じよ」という信条から、戦争の醜悪 さを告発し続け、退廃美術展の主な標的となったディックス。ユダヤ人迫害から逃れる中で絵を残し、収容所での死後から四半世紀余りを経て見いだされたヌス バウム。変幻する「国家」への抵抗という視点で語られる「美意識」の数々は悲しくも美しい。

表紙画像

汝の目を信じよ!——統一ドイツ美術紀行

著者:徐 京植

出版社:みすず書房   価格:¥ 3,675

0 件のコメント: