2008年9月24日水曜日

asahi shohyo 書評

線と面の思考術 [著]袖川芳之

[掲載]2008年9月21日

  • [評者]梶山寿子(ジャーナリスト)

■二つの思考を使いこなす

  激しい時代の変化に対応して、なすべき課題を発見し、他に代わりのいないオリジナルな人材になる——そのとき必要となるのが、自分の頭で考える力だ。私た ちの脳は、順を追って展開する論理的な「線の思考」と、直感的で主観的な「面の思考」を使って現実をとらえているという。料理本を例に取ると、レシピが 「線の思考」で出来上がりの写真が「面の思考」。双方そろっているからわかりやすい。この二つの思考を使いこなすことが「自分の頭で考える武器」になると 本書は説く。

 著者はマーケティングや消費者研究を専門とする広告会社社員。裏付けとなる理論は極力省いて、「ひとりブレーン・ストーミング」など、線・面の思考を意識した発想法やプレゼン術の要点を解説する。

 「線の思考」派は本文の頭から本を読み、「面の思考」派はまず目次を見るという具合に、個人の思考にはクセがある。自分や交渉相手の思考パターンを知っておいて損はない。

 読みやすさに徹したせいか、「あらすじ」だけで終わったような物足りなさもあるが、「プレゼンは二人で行うとやりやすい」など "目から鱗(うろこ)"の指摘も。漫才のツッコミよろしく、合いの手となるコメントを挟み、聞き手の「面の思考」を刺激するのだ。3種類のノートに内容や 気づいた点を書き留める「独学力をつける読書術」も興味深いが、よほど几帳面(きちょうめん)でないと習慣にするのは難しそうだ。

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