2013年6月29日土曜日

asahi shohyo 書評

ニッポン現代アート [著]高階秀爾

[文]原田マハ(作家)  [掲載]2013年06月23日

岡村桂三郎[獅子08−1]部分 2008年 高橋コレクション蔵 拡大画像を見る
岡村桂三郎[獅子08−1]部分 2008年 高橋コレクション蔵

表紙画像 著者:高階秀爾  出版社:講談社 価格:¥ 2,415

 少し前に、現代アートの美術館を女性雑誌の編集者とともに訪れた。その人は、「恥ずかしい限りですが、私、現代アートというのがよくわからなくて……」と正直に打ち明けた。私は答えた、「わからなくて当然ですよ、私だってわからないんですから」と。
  私も、かつて現代アートを「わかろう」と努めた時期がある。次々に登場する最先端の表現を、ある種の類型や流派に当てはめて、「多分、こういうことだろ う」と結論してみたりもした。しかし、ようやく「わかった」のは、現代アートとは、わかるものではなく、感じるものだということだった。
 本書 は、古今東西の美術史に暁通した美術評論家が選出した現代アーティストの作品に、小気味よくまとめられた評論が併記された、現代アートを「感じる」ための 一冊である。著者いわく、「現代アートは今、混沌(こんとん)のなかにある」。ポスト・モダン以降、アーティストたちは「羅針盤を失った船のように、ただ 自己の感性だけを導き手として、この混沌の海へと船出をしていく」と。しかし、混沌のさなかへ放り出されてしまったアーティストたちへの著者のまなざしは あたたかく、時に鋭い。さまざまな表現・手法の作品を実にやさしく、かつ的確に解説しつつ、いかなる混沌の中にあってもきらりと光を放つのが現代アートな のだと諭してくれている。
 ページを繰るごとに飛び出す画の迫力。評論は、混沌を漂流する船たちの羅針盤となって、私たちの元へと彼らを届けてくれる。現代アートの光を察知することは、きっと誰にでもできるはずなのだ。あなたにも、私にも。
    ◇
 講談社・2415円

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著者:高階秀爾/ 出版社:講談社/ 価格:¥2,415/ 発売時期: 2013年04月

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