昆布の「味力」じわり浸透 関連本も人気
[文]足立耕作 [掲載]2013年06月08日
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昆布だし教室に主婦らが集まり、だしの取り方を指南する本も相次いで出版されています。最近はフランスのシェフからも熱い視線が注がれているとか。この機会に、昆布をもう一度見直してみませんか。
「簡単でしょう。手間は無いに等しいですよね」
北海道産天然物を扱う老舗「こんぶ土居」(大阪市中央区)の土居純一社長(39)が参加者に語りかけた。真昆布を水に一晩つけた鍋を沸かし、かつお節を入れるだけ。味を見た女性らは「おいしい」とうなずいた。
5月中旬、店内で開かれただしの取り方講習会。長女と参加した近くの田中賀代さん(64)は、ずっと粉末のだしを使ってきたという。「病気で体を悪くしたこともあり、食生活を見直したい。娘にも学んでほしい」
同社は7年前から月1回、講習会を開いてきた。店先にチラシを張り出すだけで、インターネットサイトなどで告知はしていない。始めたころは6人の定員がすぐには埋まらなかったが、今では口コミで広がったのか、受け付け開始の日に予約が埋まる。
もう約400人が受講した。土居社長は「だしを利かせれば調味料に頼り過ぎることなく、素材の旨(うま)みを生かせる」と話す。
昆布の小売りや卸売りなどでつくる日本昆布協会(大阪市)は昨年夏、女性500人に「昆布でだしを取った年間回数」をアンケートした。「今まで一度もな い」が1割を占め、計6割弱が年10回に満たなかった。月に4〜16回は約2割だった。敬遠の理由を複数回答で尋ねると、「めんどう」が最も多い約3分の 2。「顆粒(かりゅう)だしを使う」も52%に上った。
一方、一昨年末の別の調査では8割が「ふだんの食生活に取り入れたい」と回答。そのため に知りたいこととして、だしの取り方やだしを取った後の利用法などの「レシピ」を挙げる人が多かった。協会の小笠原朋之専務理事は「日常的にだしを取る人 は多いとは言えないが、関心は高い」とみる。
今年4月、東京・渋谷の代官山蔦屋(つたや)書店の店頭に、「おいしいね。まずはおだしで。」(文化出版局)と、利尻産の昆布などが並んだ。出版記念に合わせた試み。昆布水などの試飲会もあった。
文化出版局書籍編集部の浅井香織さんは「親から引き継がれず、だしの取り方を知らない若い世代が増えている。だし文化を見直してもらうことにつながれば」と、出版のねらいを話す。
「かけこみおだし塾」や「奇跡の昆布革命」など、最近はだしや昆布をテーマにした本の出版が相次ぐ。同店にも10冊以上並べられ、売れ行きは好調という。 料理本コーナーの責任者、勝屋なつみさんは「残留農薬や産地偽装などの問題があり、食への不安が広がっている。食の基本にかえろうという消費者は増えつつ あるのでは」と話す。
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