伝え方が9割 [著]佐々木圭一
[文]永江朗 [掲載]2013年06月14日
■「デートしてください」では成功しない
昔から「物は言いよう」という言葉があって、たとえば『広辞苑』では「同じ物事も話し方によってよくも悪くも聞こえるものだ」と説明されている。誰もが知っている、いわば常識に属することだろう。
佐々木圭一の『伝え方が9割』に書いてあることも、このごく常識的なことである。わざわざ言われるまでもないことばかり。だが、その誰もが知っているよう なことを書いた本がこんなに売れるのは、まさに本書の「伝え方」による。とりわけタイトルが成功。本書は、売れているという事実によって、伝え方が大事だ ということを実証した。それが「9割」かどうかはともかくとして。
書かれているのは、たとえばこんな具体例だ。
好きな人をデートに誘うとき、「デートしてください」と言うよりも、「驚くほど旨いパスタの店があるのだけど、行かない?」と言ったほうが、成功する確率がぐんと上がるというのだ。
たしかに著者の言うとおりだと思うが、よく考えると、たんに「伝え方」だけの問題ではなさそう。「デートしてください」とストレートに言う人の、いわゆる キャラと、旨いスパゲティ屋があるからと誘う人のキャラはずいぶん違う。「デートしてください」と直球しか投げられない人が、スパゲティ屋に誘うという変 化球を投げられるようになるためには、それなりのキャラづくりやトレーニングなりが必要だと思う。スパゲティ屋を「パスタの店」と言い換えたり、「驚くほ ど旨い」なんていう言い回しを真顔で使えるようになることを含めて。ぼくには無理かもしれない。
そう考えると、「物は言いよう」というありふれた常識も、いざ実践しようとするとなかなか奥が深い。伝えたいことが伝わらなかったからといって(一応そういうことにしておこう)、「メディアの大誤報」などと責任転嫁する政治家のいる昨今だからこそ、とくにそう思う。
この記事に関する関連書籍
著者:佐々木圭一/ 出版社:ダイヤモンド社/ 価格:¥1,470/ 発売時期: 2013年02月
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