2011年12月13日火曜日

asahi shohyo 書評

書評

人と動物、駆け引きの民族誌 [編著]奥野克巳

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)  [掲載]2011年12月11日   [ジャンル]科学・生物 

表紙画像 著者:奥野克巳  出版社:はる書房 価格:¥ 2,415

■過剰な捕食諫める伝承の深み

 人間と動物との関わりは、「狩る者」と「狩られる物」との関係から家畜化を経て、現代は愛玩動物に転じた。もっとも近代医学は実験動物としても利用してきた。
  人類史のこのサイクルの中で、愛玩動物はともかくとして、一貫しているのは〈殺して食べる〉という行為である。本書はこの関わりに「駆け引き」という語を 挟んで文化人類学、あるいは民俗学的な分析を試みている。気鋭の研究者7人が、それぞれの専門分野の視点で現代の研究レベルを紹介するのだが、今なお狩猟 で動物を食する民族、自分たちの祭礼のために供犠となる動物(なぜか牛が多いのだが)への敬意、さらには特別な儀式を行い神の意味をもたせて決して殺さな い飼育習慣など、南アジア、東アフリカ、中国・新疆ウイグル自治区、エチオピアなどの種族の関わりを、語り続ける。
 過剰な捕食を諫(いさ)め、神と崇(あが)める民話や伝承の深みに驚かされる。この歴史に傲岸(ごうがん)さを持ち込む現代人への批判が小気味いい。
    ◇
 はる書房・2415円

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