2012年8月2日木曜日

asahi shohyo 書評

NHK歴史番組を斬る! [著] 鈴木眞哉

[文]青木るえか  [掲載]2012年08月03日

表紙画像 著者:鈴木眞哉  出版社:洋泉社 価格:¥ 935

■視聴者よ、歴史の勉強をしっかりしろ
 著者の鈴木さんは怒ってらっしゃる。いくらなんでも売らんかな でこんないい加減な歴史番組をつくっていいのか!と。時代劇はともかく、いわゆる歴史情報番組。これのデタラメさに怒り爆発だ。読んでいて「なるほどな あ」と思う。史料でわかりきっていることを「あたかも新発見のように」放映したりする。また「著者が指摘して間違いだとわかっていること」を放送している と怒ってらっしゃるが、それはムリもない。そして、鈴木さんがもっと怒るのは、NHKには歴史に対しての定見がない、ということだ。番組によって解釈も事 実認定もガラッと変わったりしている、こんなことでいいのか!と。
 いや、しかし、それはしょうがないのでは。局に歴史解釈の定見を求めても……いや定見はあるのかもしれないが、すべての番組にその定見を徹底させるのは難しいのでは……というよりも、それじゃ番組をつくる上でつまらないんでは……。
  そんなことを言ってるんじゃない!と、さらに怒られそうだ。鈴木さんの言うこともわかるんですよ。でも、人に興味を持ってもらいたいなら、正しいことばっ かりやってるわけにもいかんだろうし。マスコミは視聴者を騙して洗脳しようとしている、という考え方の人がいるようだが、テレビ局がへんな番組をつくっ ちゃうのはたいがい「アイデアの無さ」と「とにかくウケればいい」と「とにかく楽しんでくれりゃいい」が入り混じった結果であると思う。基本は「能力の足 りない人による善意の発露」である。
 そんな中で、NHKの歴史情報番組なんてのはまだマシなほうではないのか、と思ったりするわけだ。作家が出 てきてトンデモ史観を開陳しても、それが織田信長とか柿本人麻呂とかそんな昔のことなら、笑って済ませられるし。いや、だから、それを信じる人がいるから いかんのだと鈴木さんは怒るわけだが、それなら歴史の勉強をしっかりしろ、と視聴者に言うほうが先決と思う。

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著者:鈴木眞哉/ 出版社:洋泉社/ 価格:¥935/ 発売時期: 2012年05月

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