国内最古級の土偶発見 滋賀・相谷熊原遺跡
滋賀県文化財保護協会は29日、同県東近江市の集落遺跡・相谷熊原(あいだにくまはら)遺跡から縄文時代草創期(約1万3千年前)とみられる国内最古級 の土偶が出土したと発表した。三重県で1996年に見つかった土偶とほぼ同時代のもの。ともに女性像で、今回の土偶のほうが指先サイズと小型だが、乳房や 腰のくびれが明瞭(めいりょう)に表現されている。信仰や祭祀(さいし)にかかわる呪物とみられ、旧石器時代からの転換期の縄文人の精神文化の芽生えを考 えるうえで貴重な発見という。
土偶は高さ3.1センチ、最大幅2.7センチ、重さ14.6グラム。胴体部分のみを現した造形で、欠落のない完全な形で出土した。三重県松阪市の粥見井 尻(かゆみいじり)遺跡から出土した同時代の土偶(全長6.8センチ、最大幅4.2センチ)が逆三角形に近い形状なのに対して、今回の土偶は豊満な体形。 底を平たく仕上げて自立できる造りは縄文中期(約5千年前)以前の土偶では例がないという。
京都大大学院の泉拓良教授(考古学)は「女性らしさの表現は、多産などの願いを託したとみられ、定住化が進んだとみられるこの時代と土偶の出現の関係を 探る鍵になるのではないか」と話す。
土偶は今回出土した5棟の半地下式の竪穴(たてあな)建物群のうち1棟の埋土(まいど)から見つかった。竪穴建物は直径8メートル、深さ約1メートルの 棟もあり、国内各地で出土した同時代の一般的な竪穴建物(直径4〜5メートル、深さ30〜40センチ)に比べて規模が大きい。多大な労力をさいて建てられ たとみられ、定住用の建物の可能性があるという。
県文化財保護協会の松室孝樹主任は「日本の古代人が短期間で居所を移す遊動生活から、いつ定住生活を送るようになったかを調べる上で貴重な資料になる」 と話す。
現地説明会は6月6日午前10時と午後1時半からの2回。雨天決行。問い合わせは同協会(077・548・9780)へ。(加藤藍子)
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