2010年5月26日水曜日

asahi shohyo 書評

ひとりの午後に [著]上野千鶴子

[掲 載]2010年5月23日

 ジェンダー研究を牽引(けんいん)してきた著者も還暦をすぎた。母を送り、父を送り、自分と「死」との間の障壁を失い「吹きさらし」 の身となった今、両親のことや幼き日のこと、「おひとりさま」の暮らしぶりなどの心根を、柔らかい言葉でつづった。「大学院に『入院』し、モラトリアム人 生を送っていた」と振り返る20代。そんな時代を経たからこそ上野研究室には「行き場のない学生たちが、なんとなくたむろ」する。嫌悪すらした母の死後、 服喪の思いで母の香水を身につけ、父の骨つぼのたたずまいに胸を痛めもする。行間に、著者の人生の軌跡が染みている。

表紙画像

ひとりの午後に

著者:上野 千鶴子

出版社:日本放 送出版協会   価格:¥ 1,365

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