ネコライオン [著]岩合光昭
[文]大西若人(本社編集委員) [掲載]2013年09月15日
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ネコとライオンが同じネコ科の仲間だってことは、たいていの人が知っている。でもよほど詳しくない限り、どこが似ていて、どこが違っているかを具体的に説明するのは難しい。そんなときは、この写真集を見れば一目瞭然だ。
科学の実験が典型的だけど、何かと何かを比較し分類する場合、他の要素はそろっている方がいい。猿から人間への進化を示す絵がみんな同じ姿勢なのも、比較しやすいからだろう。この写真集でも、ネコとラインが驚くほど同じ姿勢をとっている。まさに、比較と分類の極意。
子どもを口にくわえる時も決闘のポーズも、ジャンプの瞬間もあくびの顔も、さらに子どもが顔をそろえるさまも、両者は、よく似た格好で写っている。
その結果、開けた口の形はほとんど同じだ、とか、体のフォルムはライオンがいかついなあ、などと細部の類似性と相違点に気づくことになる。ちなみに東京都写真美術館では10月20日まで、ほぼ同内容の展覧会が開かれている。
モデルさんにポーズをとってもらったわけでも、人類の進化図のように恣意(しい)的に描いたわけでもない。相手は、こちらの言うことなんて聞かない動物たち。しかも片方は、そう簡単には撮れないであろうサバンナの王者だ。
おそらく膨大なアーカイブから似た姿勢のペアを作っていったのだろう。それとも、もともと姿勢で写真を分類していたのか。あるいは撮る時から? 動物写真の名手ならではの仕事といえそうだ。
さてあなたは、ネコとライオンは似ていると思う派か、似ていないと思う派か。この写真集を見た後は、人間も二つに分類される。
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クレヴィス・1890円
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著者:岩合光昭/ 出版社:クレヴィス/ 価格:¥1,890/ 発売時期: 2013年08月
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