2013年9月11日水曜日

asahi shohyo 書評

「リベラル保守」宣言 [著]中島岳志

[文]内山菜生子  [掲載]2013年09月13日

表紙画像 著者:中島岳志  出版社:新潮社 価格:¥ 1,470

 変化を厭わない。他者への寛容さを保つ。自由を尊重する。それが本来の「保守」思想であり、著者が唱える「リベラル保守」という。古今東西の保守思想家の言を交え、対立軸に置かれがちな「リベラル」と「保守」に橋を架けていく。
 保守とは人間の不完全さを受け容れる精神だ。人の作るものに欠陥を認め、歴史の風雪に耐えた「伝統」を重んじる。それゆえ、理性に頼って完璧な社会を設計しようとする左翼思想に反対する。東日本大震災や貧困問題などを通じて思索を深め、脱原発も主張する。
 サヨク的若者だった著者が保守思想に傾倒する過程が印象深い。中学生だった一九八九年、革命でルーマニア大統領が処刑される。前夜まで「熱狂」した自分を人殺しと責め、人が感情に支配される危うさを体感する。
 「リベラル保守」提唱は道半ばであり、議論の活性化が目的という本書。抜本的改革を叫ぶ政治家を批判したため、出版中止になりかけるトラブルも。穏やかで明快な文章に引きこまれ、執筆予定という理論書が待ち遠しくなる。

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「リベラル保守」宣言

著者:中島岳志/ 出版社:新潮社/ 価格:¥1,470/ 発売時期: 2013年06月

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