苅谷剛彦さん 人類の課題に挑む知の拠点に刺激
[文]塩倉裕 [掲載]2013年01月15日
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格差問題の研究などで知られる教育社会学者の苅谷剛彦(57)が、英オックスフォード大に転身して4年余り。国際舞台への「50代での挑戦」で得た見聞を、著書『イギリスの大学・ニッポンの大学』として昨秋発表した。休暇中の一時帰国を機に、話を聞いた。
東京大教授だった苅谷が事実上のヘッドハントで英国に渡ったのは2008年秋。オックスフォード大の社会学科と現代日本研究所に属し、教授として研究と教育に携わっている。
今回の著書は「ビギナーとしての異文化体験報告」だという。教育や入試の進め方、社会での大学の位置……。大学教育に精通した苅谷にとっても、この4年間は発見の連続だった。
「なぜ自分は社会科学者をしているのか。その原点を見直す機会になりました」
苅谷に衝撃を与えたのは、「ワールドクラスの大学教育」の実態だった。
世界各地から集まる学生たち。その多くが出身国や地域の抱える問題を解決したいと願う。産業化の進むトルコで識字率の低い女性の雇用を改善しようとする学生、中国の格差問題を解こうとする学生……。
「戦争や貧困、国家建設など切迫した問題を解決したいと訴える学生と教員がいた。いずれも世界中の知性を結集しなければ解決できない問題です。オックスフォードはその拠点になろうとし、だから情報もカネも人材も世界から集まってくる。そんな構図が見えました」
グローバル化は、日本の大学界でも課題として認識されている。だが苅谷の目には、あるものが足りないと映っていた。
「人類の問題を解決したいという志です。その意味でのグローバル化をしたいと思っているかどうか」
苅谷が米国の大学院での経験をもとに『アメリカの大学・ニッポンの大学』を書いたのは1992年だった。20年後に『イギリス』版を書いたことになる。日本で実力を認められる中での海外挑戦だったが、「やって良かった」と振り返る。
「日本の大学以上に『学生を通じて世界のどこかにつながっている』との実感が持てる。論文を見たレバノンの研究者から反応が来る。グローバルな課題との距離が縮まりました」
今年は、英語での2冊目の著作を刊行予定だ。
この記事に関する関連書籍
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