2011年6月8日水曜日

asahi shohyo 書評

知の広場—図書館と自由 [著]アントネッラ・アンニョリ

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年6月5日

表紙画像著者:アントネッラ・アンニョリ  出版社:みすず書房 価格:¥ 2,940


■予期せぬ人・体験と出合う場

 「すべてが欲しい、今すぐに欲しい」

 情報でも映像でも音楽でも、そんな個人の欲求をネットがいとも簡単に満たしてくれる時代である。

 図書館はいわばその対極にある不自由な存在かもしれない。だからこそ、創造力や社会の知性を育てる文化活動の場として重要性は増す、とする。欲しいものだけでない、予期せぬものとの出合いが、豊かな人生には欠かせない。

 著者は、イタリアでの実績をもとに、そんな場としての図書館作りを豊富な具体例とともに提言する。

 本が、読んでくれる人をじっと待っている静かな図書館はもう存在しない。人々が集い、さまざまな体験をする「屋根のある広場」がこれからの姿だとする。

 広場のイメージはいかにもヨーロッパ的だが、千代田区立図書館で、出版社や古書店ともつながった新たな場作りに取り組んだ柳与志夫氏の熱のこもった解説が、私たちの身近にひきつけてくれる。

    ◇

 萱野有美訳

表紙画像

知の広場——図書館と自由

著者:アントネッラ・アンニョリ

出版社:みすず書房   価格:¥ 2,940

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