2011年6月16日木曜日

asahi shohyo 書評

文は一行目から書かなくていい [著]藤原智美

[評者]清野由美(ジャーナリスト)

[掲載]2011年6月12日

表紙画像著者:藤原 智美(ふじわら ともみ)  出版社:プレジデント社 価格:¥ 1,365


■作家が指南、硬派な文章術

 自分の書いた文章で相手の共感を呼び起こすことは、実は非常に難易度が高い。それが企画書やリポートなど、ビジネス上の文書であればなおさら。そんな困難を持つ仕事人に向かって、プロの作家が指南する文章術が本書にはまとめられている。

 といっても著者のスタンスは「直接的なハウツーばかりを他人の言葉のなかに求めても、それで完璧に書けるようになるとか、すば らしい文章が生まれるということは、まずありません」と、厳しくてストイックなもの。さすが芥川賞作家。その辺のハウツー本とはレベルがちょっと違うの だ。

 たとえば著者は、文章を自分で音読してテープに録音し、再び聞く、という手の込んだ推敲(すいこう)を実践していた。タイトル の「文は一行目から書かなくていい」を始め、「時間を忘れて没頭する」「締め切りの二日前に原稿をあげる」など、ノウハウはプロとしてのものであり、その 意味では限りなく哲学に近い。

 ちなみに、フツーの仕事人にとって参考になるのは後半にある、デジタル化時代の文章術。検索やコピペが簡便化する中で、「数字 のウソに気をつけろ」「資料におぼれるな」といった、硬派な助言が並んで納得しかり。あ、本書には「『ちなみに』は使わない」という指南もあった。

表紙画像

文は一行目から書かなくていい ? 検索、コピペ時代の文章術

著者:藤原 智美(ふじわら ともみ)

出版社:プレジデント社   価格:¥ 1,365

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