2011年6月1日水曜日

asahi shohyo 書評

アメリカ音楽史—ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで [著]大和田俊之

[掲載]2011年5月29日

表紙画像著者:大和田 俊之  出版社:講談社 価格:¥ 1,890


 19世紀に流行したミンストレル・ショーとは、白人が顔を黒塗りして演技する大衆芸能で、ミュージカルの形成に影響を与えた。ユダヤ系などの移民は、その効果で相対的に「白人」の地位を獲得したという。

 本書は、他者になりすます「擬装」を鍵に米国の音楽史を読み解く。同じ南部土着の音楽でありながら、ブルースが黒人の、カント リーが白人のものとなったのは人種別の販売戦略のせいだった。両者が融合したロックンロールの覇者E・プレスリーは「黒人のフィーリングを感じさせる白人 歌手」として発掘された。白人と黒人の関係を背景に「擬装」の欲望がいかにポピュラー音楽を推進したかを論考し、刺激的な指摘に富む。

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