2011年6月23日木曜日

asahi shohyo 書評

被災者との語らい、再生への一冊に ツイッター詩人・和合亮一

2011年6月22日

表紙画像著者:和合亮一  出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,155


 放射能の恐怖や死者への鎮魂を詩に結晶させてツイッターで発信してきた福島市の詩人・和合亮一(42)が、福島県の被災者7人にインタビューした。その記録と、傷ついた心が再生する過程をつづった詩を、一冊の本にまとめた。

 「空っぽになるまで話し続けた/空っぽになるまで話し続けると/変わることがある」

 7人のうちの1人は、富岡町の理容業の女性(67)。避難所で、ふと他人に話しかけたら、乱暴な言葉が返ってきた。人間関係に疲れ、気持ちは落ち込んだ。再生の契機は、ボランティアの若い女性に話を聞いてもらったことだった。

 「あなたは 愕然(がくぜん)とした/暗い街 真っ暗な 通り/この街には 違うものが 住んでいる と」

 南相馬市のクリーニング業の女性(63)は、避難先から戻ると、街が空白地帯となっていた。

 女性は、チェルノブイリ原発事故のドキュメンタリー映画を思い出す。お年寄りが普通に、汚染された土地で暮らしていた。自分もここで生き、他人にありがとうといえる気持ちを取り戻したい、と思った。

 「あなたの/潔い呟(つぶや)きを/忘れない」「これからが/自分という映画を/楽しむとき」

 和合は「7人と語るうちに一緒に泣き、励まされた。放射能が降り続く日常や多くの人が命を失ったことの意味を見ないふりをせずに受け止め、書いていくことで、しるべにしていきたいと思った」と話す。

 和合は中原中也賞を受賞した詩人で、高校教諭でもある。3月16日からツイッターで詩をつづると、読者が口コミで増え、今は約1万8千人がフォロー(登録)している。

 今回の詩は『詩の邂逅(かいこう)』(朝日新聞出版)に収録。『詩の礫(つぶて)』(徳間書店)、『詩ノ黙礼』(新潮社)と共に17日に全国で発売した。それぞれ8千部、1万部、1万部と詩集としては異例の部数で、『詩の礫』は5千部の増刷が決まった。(赤田康和)

表紙画像

詩の邂逅

著者:和合亮一

出版社:朝日新聞出版   価格:¥ 1,155

表紙画像

詩の礫

著者:和合亮一

出版社:徳間書店   価格:¥ 1,470

表紙画像

詩ノ黙礼

著者:和合亮一

出版社:新潮社   価格:¥ 1,260

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