2010年9月1日水曜日

asahi shohyo 書評

愛と憎しみの新宿—半径一キロの日本近代史 [著]平井玄

[掲載]2010年8月29日

  1960年代末の新宿をめぐる言説は、活字、ネットを問わず枚挙にいとまがない。本書はそうした〈革命の新宿論〉への、毒を含んだ反歌。著者は新宿2丁目 生まれ。60年代末、都立新宿高校に通い、坂本龍一らとともに高校全共闘の中心部隊となった。「東京の西側で育ってきた」地元っ子による一風変わった郷土 史だ。だから「当時新宿で一番安いラーメンはいくらだったのか?」など、統計にもネットにも現れない地べたの目線から新宿の路地をはい回る。「ゴールデン 街なら夜ごと頻発する理屈っぽい小競り合い」の臭みから無縁なところが、なんとも風通しがいい。

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