2010年9月1日水曜日

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サンデル教授、東大で白熱授業 正義について熱く討議

2010年8月25日

写真:サンデル教授は聴衆に次々と問いを発し、「正義」について熱い討議を交わした=東京大本郷キャンパス、NHK提供サンデル教授は聴衆に次々と問いを発し、「正義」について熱い討議を交わした=東京大本郷キャンパス、NHK提供

  人気の「白熱教室」の日本出前授業が実現した。米ハーバード大で空前の履修者数を誇るマイケル・サンデル教授(57)の来日特別講義が25日、東京大(東 京都文京区)で開かれた。身近な題材から問いを投げかける有名な対話型講義に聴衆が積極的に参加し、本家さながらの熱い討議が繰り広げられた。

 教授の講義を今春から放映したNHKが教授を招き、東大と共催した。本郷キャンパスの安田講堂には、東大生約300人のほか、10倍の応募から選ばれた一般枠の500人も参加した。講義は同時通訳され、質問や討論には日本語と英語が交じった。

 テーマは「Justice(正義)」。教授は教壇の前を縦横に歩き回り、「イチローの年俸は米国の大統領の42倍、日本の教師の平均所得の400倍。これは公正?」と質問。

 ある女子学生が「イチローの活躍はチームに支えられてのもの。額が多すぎる」と持論を話すと、教授は「大統領も閣僚やチームが いるよ」と切り返す。女子学生は「野球は娯楽。オバマの仕事の方が重要」と再反論。多額収入者への課税の是非に話が及ぶと、男性が「個人が努力で得たお金 を国が再分配するのは権利の侵害」と声を上げた。

 戦争責任の話題も盛り上がりを見せた。「日本は東アジアに謝罪すべきか」「オバマ大統領は広島・長崎への原爆投下に責任がある か」との問いには、会場が真っ二つに。「祖父の世代の行為に責任はない」「生まれる場所は選べないのに、謝罪を強制されることには納得がいかない」との発 言が飛ぶと、「前の世代を土台にして今の世代がある。当然責任がある」。2時間の予定が1時間半近くオーバーする白熱ぶりだった。

 サンデル教授は「日本人はシャイと聞いていたが、本当に真剣なやり取りが交わされ、感動的だった」と話した。

 サンデル教授の講義は日本でも今春から「ハーバード白熱教室」と題して連続放映され、大きな反響を呼んだ。講義をまとめた「こ れからの『正義』の話をしよう」の翻訳本は30万部を超えるベストセラーになっている。今回の特別講義は10月下旬以降にNHK教育テレビで放映予定とい う。

表紙画像

これからの「正義」の話をしよう——いまを生き延びるための哲学

著者:マイケル・サンデル・Michael J. Sandel

出版社:早川書房   価格:¥ 2,415

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