2010年9月20日月曜日

asahi shohyo 書評

増える教授、必要な資質問う 「大学教授の資格」

2010年9月20日

写真:「大学教授の資格」「大学教授の資格」

 大学教授はだれでもなれるあこがれの職業だろうか。大学数とともに増えてきたいまの大学教授に、最低限必要な条件と資質は何かを考えた「大学教授の資格」(NTT出版)を、千葉大の松野弘教授が書いた。

 松野教授は環境問題から高等教育まで広く研究している。

 大学進学率が5割を超えたのに対応して、教員数も膨らみ、大学教員の質が問われる時代。著書では、大学教員数の増加の実態を押さえたうえで、教授の実質的・形式的資格とは何かという問題を掘り下げている。

 特に日本で目立つ社会人教授の積極的な採用について、規制緩和の一環ともいえる1985年の大学設置基準の改正と、91年の同 基準の大綱化が契機になったと指摘。安藤忠雄・東大名誉教授、宮脇淳・北大教授、小熊英二・慶応大教授、原武史・明治学院大教授らをあげて、経歴や実績な どをもとにどんな特徴があるのか分析を試みた。

 国家公務員の経歴がある社会人教授は政策研究面で、民間企業経験者は専門領域の実務を深く知る人として貢献していると説明する。

 今後のグローバル人材としての教授の質の概念を「ネオ・アカデミズム」という言葉で提起し、社会人教授が該当するための適格要 件として、10年以上の社会経験、学位の取得、国際的な学会への所属、論文などの実績などを挙げた。松野教授は「大学教員の質を上げたいと思ったのが動機 です。社会人教授は研究業績があってはじめて新たなアカデミズムの担い手になる」と話している。

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