2010年9月7日火曜日

asahi shohyo 書評

東洋大「妖怪学講義」が本に 怪奇楽しむ授業、ライブ形式で

2010年9月6日

写真:出版された妖怪学講義出版された妖怪学講義

 東洋大学が昨年度から開いている「妖怪学講義」(講談社)が本にまとめられ、出版された。妖怪やいわゆる「オカルト」の話を哲学、社会学、自然科学といろんな視点で切っていくという人気授業で、全国的にも珍しい試みだ。

 同大と妖怪の縁は深い。約120年前、大学の創立者で哲学者の井上円了が「妖怪学」と銘打った講義を開いている。当時、まだ人 びとは不可思議な現象が起こると「妖怪の仕業に違いない」と信じていた。これを科学的に解明し、妖怪の存在を否定しようとしていたのが井上。「妖怪博士」 と呼ばれていたという。

 そして昨年度、井上の生誕150年を機に「妖怪学」が復活。現代版は「妖怪を楽しむ」ことに主眼を置く。授業のまとめ役を務めるライフデザイン学部の菊地章太教授(比較宗教史)は「今はもう妖怪を信じている人は少ない。それを今さら否定せず、楽しむ方がいい」と話す。

 例えば、幽霊と文学。昔の怪談は、子どもを残して死んだ母親だったり、死してなお夫を気遣う妻だったりと、人間の切ない情をえがく場面に幽霊が使われてきた。また、呪いや予言からは、言葉に縛られて行動してしまう人間の心理がわかる。

 出版された「妖怪学講義」は、授業内容をライブ形式で収録したほか、学生の感想も盛り込む。今年度、授業を受けている4年の出 川尚さんは「妖怪は、そこに住む人の文化や価値観と切り離せないものだとわかった」と話す。菊地教授は「妖怪をいろんな切り口で見ることで、学生には幅広 い考え方を学んでほしい」と話す。(原田朱美)

表紙画像

妖怪学講義

著者:菊地 章太

出版社:講談社   価格:¥ 1,575

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