農業に正義あり [著]石堂徹生
[文]中村智志 [掲載]2013年04月05日
日本がTPPに参加すれば、約40%しかない日本の食料自給率がさらに下がるとみられる。農業はどうすれば生き残れるのか。
農業ジャーナリストの著者は本書で、農業史を検証しつつ農業の未来を提示している。
戦後の日本は、食生活が洋風になった。著者によると、家畜の飼料から米国産になり、いわば米国の「食料の傘」に入った状態だという。その結果が、国内の農業の苦戦である。
著者は、「食の内需拡大」につながる農業のあり方を説く。ひとつのモデルが埼玉県の金子農場だ。水田、畑、山林を持ち、米を中心に小麦や大豆、野菜などを 有機栽培で作り、乳牛や鶏なども飼う。農業と畜産を一体化させた複合経営である。その循環のなかで、飼料も自給。産直で消費者の食をまかなう。こうした、 小規模だが生産性の高い農場を全国に増やせば、結果的に内需が拡大するという。
著者は、東日本大震災後、被災地の農家がこう語るのをテレビで見た。「大きな田んぼが水びたしになり、農業機械を入れられない。小さな田んぼなら人力で復旧できるのだが」。ハッとさせられる言葉だ。
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著者:石堂徹生/ 出版社:現代書館/ 価格:¥2,415/ 発売時期: 2012年12月
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