至高の日本ジャズ全史 相倉久人さん
[文]大上朝美 [掲載]2013年02月03日
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■現場に出会い、盛り上げ、決裂
ジャズはラジオかレコードで聴くしかなかった1950年代から音楽誌に評論を書き始め、60年代にはライブの現場にも立ち、セロニアス・モンクやジョン・コルトレーンの来日コンサートで司会を務めた。そんな人物による臨場感たっぷりの「日本ジャズ」史である。
「まあ、実際に演奏の場で多く見てきましたからね」とさりげなく言うが、重要な出来事に、いつも居合わせる。65年、ナベサダこと渡辺貞夫が米国留学から 帰国して翌日、銀座の小さなジャズハウスを客と報道陣で超満員にした時もそうだ。空港へ迎えに行き、自分で依頼したものの、現れる保証はなかった。しかし 結果は、ナベサダの吹いた初めの音で「そこにいる全員がぶっ飛ぶか、のけぞっていた」。
有楽町にあったジャズ喫茶「コンボ」での人脈がそもそもの始まり。やがて銀座の銀巴里、ジャズ・ギャラリー8、新宿のピットイン……東京のジャズシーンに企画や司会でかかわり、盛り上げ、決裂する。
「芸術であれエンターテインメントであれ、それが何であるかを決めるのは、作る側でなく受け取る側。受け手がいなければ、どんなすごい演奏をしても、あだ花」が持論。
同時に、米国を模範とし、模倣するのではなく日本に根付いた「日本ジャズ」を求め続けた。それがようやく60年代末、山下洋輔トリオによって実現したのを見届け、ジャズ評論をやめる。
「全部、無計画、偶然なんです僕は。生き方からして」。それでもいつの間にか形が付いている。人生そのままジャズ、なのだ。
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集英社新書・777円
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