2013年2月15日金曜日

asahi shohyo 書評

理想の教師、チームで追求 「教師力ピラミッド」

[掲載]2013年02月13日

堀裕嗣さん。自らに不足していると感じる「緻密(ちみつ)性」を高めるためにメモを取ることを習慣化しているという=4日、札幌市 拡大画像を見る
堀裕嗣さん。自らに不足していると感じる「緻密(ちみつ)性」を高めるためにメモを取ることを習慣化しているという=4日、札幌市

表紙画像 著者:堀裕嗣  出版社:明治図書出版 価格:¥ 1,995

 世間が求める「教師力」を分析したら、事務力、指導力、創造性などからなるピラミッドになった。一人で完成させるのは至難の業。だったら、チームとして完璧なピラミッドをめざそう——。札幌市の中学教師がそんな考察を本にまとめた。
 1月に出版された「教師力ピラミッド」(明治図書出版)。執筆者は、札幌市立中学で国語を教える堀裕嗣(ひろつぐ)さん(46)。北海道で生まれ育ち、地元の大学を卒業。中学教師になって22年目だ。
 堀さんが「教師力」を分析しようと思い立ったのは2007年。前年、第1次安倍内閣の「教育再生会議」が発足し、「不適格教員は教壇に立たせない」と、教員の「質」を厳しく追及した。保護者から教師へのクレームも増え、教育現場への批判が大きくなっていた時期だ。
 「一生懸命やっているのに、なぜこんなに責められるのだろう」
 肩身の狭い思いをしながら、ふと「世間が求める理想の教師像とは何だろう」と疑問がわいた。

■分析してあぜん
 批判内容を調べれば、何かヒントが得られるのではないかと思い、インターネットで「教師」「不祥事」などのキーワードを検索。大量にヒットした事例を丁寧に分類していった。
  できあがったのは「生活力・モラル」を土台に「指導力」「事務力」を重ねて、トップに「創造性」「先見性」があるピラミッド=図。「指導力」には、学校規 範を率先して実行する「父性型」▽やさしく包み込む「母性型」▽子どもと対等につきあえる「友人型」——の3要素があるという考察もできた。
 「あぜんとしました。世間の要求に一人で応えられる教師はあり得ない」

■互いに良さ補う
 堀さんは当時、中学3年の学年主任だった。しばらく悩んだ末、「教師個人でなく、チームでピラミッドを完成させればいいんだ」と考えついた。
  声が大きく、明るい性格の堀さんは、「僕は父性型と友人型の指導力があって、事務力にやや不安がある」と自己分析。すべてを独力に任せず、「母性型」の指 導力を持つ教師に、精神面の弱い生徒の指導の援助を頼んだり、緻密(ちみつ)な「事務力」のある教師には書類の点検作業を任せたりし、分業・協業を図っ た。
 「多様な人材でチームを作る。互いの良さを補完し合いながら、学校運営をしていけばいい」。堀さんは、とくに教師集団の要になりやすい「父性型」指導力を持つ教師の役割が大きいと考えている。校長や教頭など管理職には、「創造性」と「先見性」が重要だと感じるという。

 本にまとめるまでの間、教師への逆風は吹き続け、今もやんでいない。
 安倍政権の教育再生会議の提言で、教員免許の更新制が09年度にできた。原則として10年ごとに30時間以上の講習を受け、都道府県教委に申請手続きをしなければ、免許が失効する。
 昨年3月、前大阪府知事の橋下徹・大阪市長の主導で、保護者の申し立てで不適格教員を学校現場から排除できる府条例ができた。
 「ゆとり教育」の反動で学力向上が叫ばれ、いじめ問題などにも追われる。学校現場は厳しさを増すばかりだ。
 いじめの対応について、「事実関係を細かく確認し、父性型と母性型の教師それぞれが適切に関わることが重要だと思う」と堀さん。「すべての教師がお互いの特性を意識し、周囲の教師に気を配りながら、情報を共有しやすい雰囲気を作ることが大切です」(古田真梨子)

この記事に関する関連書籍

教師力ピラミッド 毎日の仕事を劇的に変える40の鉄則

著者:堀裕嗣/ 出版社:明治図書出版/ 価格:¥1,995/ 発売時期: 2013年01月

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