「群馬学」の決定版 群馬の謎82を解明
[掲載]2013年01月29日
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群馬の様々な「謎」を、県内で活躍する専門家が解き明かす文庫本が出た。新人物往来社の「群馬県謎解き散歩」。群馬県立女子大群馬学センターの熊倉浩靖教授が編者を務め、各時代・地域の研究で最先端を行く9人が筆を執った。
表紙で「群馬学の決定版」と銘打つ。
本編の始まりは「どうして群馬県っていうの?」。1871年の第1次群馬県成立の際、「県庁を置いた高崎が群馬郡に属していたから」が熊倉教授の答え。5 年後の76年に現在の「鶴舞う形」となるまでの歴史を解説している。「ぐんま」の読みは明治時代からで、古代から江戸まで「くるま」と呼ばれていたことな ど、豆知識も載せた。
歴史編や地域ごとの6章に平易な文章と豊富な写真で、82の「謎」を解明していく。前橋VS.高崎、対立・並存のルーツと理由は?▽なぜ富岡に日本最初の官営製糸場が?▽群馬生え抜きの戦国大名がいないのはなぜ?▽海なし県・群馬にも海があった、などだ。
昨年夏ごろに出版社から提案を受けた熊倉教授が、各分野の一線の研究者に依頼したという。埋蔵文化財調査事業団の菊地実上席専門員、県立歴史博物館の小池 浩平、手島仁、簗瀬大輔の各学芸員、村立高山小の関俊明教諭、国学院大の大工原豊兼任講師、高崎市教委の角田真也主任学芸員、県地域文化研究協議会の巻島 隆会員が執筆。35市町村すべてが登場する。
高校生が分かる文章を心がけたといい、ルビも多め。欄外には関連施設の住所や交通機関も記され、訪れる際に便利だ。県内の書店などで販売している。900円。
■地域知り「グローカル」に
——記者は県外出身。初めて知る話が大半でした。
私自身も3分の1ぐらい知らなかった。県内の学者もユニークな研究をしているが、学術論文では県民に伝わっていないことが多い。また、観光ガイドブックで は歴史的背景に触れておらず、全県を網羅する類書は少ないのでは。こうした群馬の「謎」はたくさんある。県内出身者はもちろん、仕事で群馬に暮らす人たち にも手に取っていただけたらありがたい。
——執筆、編集の際に心がけたことは。
群馬は中心都市のない分散型。違う地域のことを知らな い。「上毛かるた」という優れた郷土教育の教材はあるが、完成は戦後間もない1947年。今は通じなかったり、当時は採用できなかったりした話もある。そ うしたものを著者それぞれが探した。「第2弾」をつくりたいという話も出ている。
——この本を読んでもそうだが、群馬は住んだら魅力が分かる。一方で、民間調査で「魅力度」が全国最下位という結果も出た。
東京と距離的に近いことが大きいのでは。製糸業や軍需産業など戦前は国の中心だったが、高度成長期以降、発信できなかった。国内全体に占める県民の人口の割合も減っている。それでいいと思っているところが県全体にある。前橋と高崎も健全な競争をしてこなかった。
——どうすればいいですか。
私が師事した上田正昭・京大名誉教授がよく使う言葉だが、地球規模で考えながら自分の地域で活動する「グローカル」の視点が重要だと、行政の人たちにはよ く言う。たとえば富岡製糸場。世界遺産を目指しているのに、地元以外の県内の子どもたちの多くは訪れていない。その結果、県民に理解が深まっていない。 「尾瀬学校」のような「富岡学校」を開き、子どもたちが知るための環境を整える必要がある。(聞き手・小林誠一)
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高崎市出身。シンクタンク勤務などを経て2009年から県立女子大群馬学センターの副センター長。専門分野は日本古代史、行政評価、地域づくり。県内外で地域振興アドバイザーを務める。
この記事に関する関連書籍
著者:熊倉浩靖/ 出版社:新人物往来社/ 価格:¥900/ 発売時期: 2013年01月
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