2011年7月12日火曜日

asahi shohyo 書評

風評被害—そのメカニズムを考える [著]関谷直也

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年7月10日

表紙画像著者:関谷直也  出版社:光文社 価格:¥ 777


■避けがたさ前提、行動のヒント

 「風評被害」という言葉があいまいなのは、厳密な定義なしに、1990年代末からマスコミ用語として使われ始めたからだという。

 著者は、人々が事件や災害などの報道をきっかけに、消費や観光などを根拠なく危険視してやめることによる経済被害、と定義する。

 その本質は、絶対的な安全を求める安全社会、代替物が容易に手に入る高度流通社会、そして情報過多社会を背景にした「疑心暗鬼の連鎖」だという。とすれば、避けることは根本的に困難という前提で対策を立てるしかない。

 そのために大切なのは、メカニズムを理解することだ。消費者やメディアだけでなく、行政や流通などの関連業者の責任も、実は重い。

 簡単には解が見当たらない問題だが、この時期に本書を問うたのは、社会学者の心意気だろう。加害側に回りたくない人に一読を勧めたい。

 今起きていることをどう考え、どう行動すべきか、ヒントを与えてくれる。

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