椅子と日本人のからだ [著]矢田部英正
[評者]温水ゆかり
[掲載]週刊朝日2011年7月22日号
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■日本人はオビ族!ナイスガイの身体技法
身体の中で取っ替えたい部位は? 取り出してジャブッと洗いたい春の目玉よりも、やっぱ腰でしょう。オールシーズンだもん。
本書は出だしから歯切れがいい。「日本の椅子は疲れる」。おっしゃる通り。では、なぜ日本では椅子文化が育たなかったのか。著 者によれば、背もたれよりもっといい姿勢補助具があったから。着物の帯である。帯には骨盤を引き締め、腹部を保護し、自然に背筋を伸ばしていられる機能が 備わっていると言う。日本人はいわば背もたれいらずのオビ(族)。宮本武蔵は『五輪の書』の「兵法の身なり」で、帯をゆるませないコツを身体技法として説 いている(腹圧が鍵)。
親本当時(03年)著者が不満だったのは、人間工学の名の下に、日本では腰椎を支えるランバーサポートの椅子が主流だったこと。そこで「ペルヴィス(骨盤)サポート」という言葉を考案、自ら椅子作りに乗り出す。
本書を読んでも腰痛は治らない。が、"文は人なり"、元体操選手で博士号を持つナイスガイの「坐」学の旅に同伴できる。表紙の椅子は近年の作品。腰部が慰撫されるような形ですねえ。仕事せず寝ちゃいそうですが。
- 椅子と日本人のからだ (ちくま文庫)
著者:矢田部 英正
出版社:筑摩書房 価格:¥ 798
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- 五輪書 (岩波文庫)
著者:宮本 武蔵・渡辺 一郎
出版社:岩波書店 価格:¥ 567
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