2012年1月31日火曜日

kinokuniya shohyo 書評

プロフィール

書評空間(書評ブログ)辻 泉

辻 泉
(つじ いずみ)
1976年東京都生まれ。
東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(社会学)。
松山大学人文学部専任講師、助教授・准教授を経て、現在は中央大学文学部准教授。
メディア論、文化社会学が専門。各種メディアの受容過程に関する実証的な調査を手広く行う中で、とりわけファン文化に関するエスノグラフィックなアプローチをライフワークとして継続中。

主著に『デジタルメディア・トレーニング』(共編著、有斐閣、2007年)、『文化社会学の視座』(共編著、ミネルヴァ書房、2008年)、『「男らしさ」の快楽』(共編著、勁草書房、2009年)、など。

2012年01月31日

『自己分析する学生は、なぜ内定できないのか?』森田均(日本経済新聞出版社)

自己分析する学生は、なぜ内定できないのか? →bookwebで購入

「本当に必要な「自己分析」のために」

 大学生の就職活動で二極分化が進んでいると言われて久しい。実際に、かなり早い段階で複数の会社から内定をもらう学生と、まったく内定がもらえない学生とにクリアーに分かれており、その中間にあたるものは少ない。


 前者のような「就活優等生」は、他の学生生活全般においてもアクティブだったりして、ある意味で当然の結果のようでもあるのだが、これはどちらかといえばごく一部の事例なので、あまり参考にはならない。


 むしろ、圧倒的な多数を占める後者への対策を考えることが、大学に勤務するものにとって、日々の課題となりつつある。


 評者も自分の研究から離れて、いくつか就活本を読みこんだりしているが、このように就職活動を始めてみたけれどうまくいかない学生たちに対して、現段階で最も適切な対応を示しているのが、本書『自己分析する学生は、なぜ内定できないのか?』である。


 学生に本書を薦めると、多くのものたちは非常に戸惑うことになる。


 「えっ!自己分析しちゃいけないんですか?しなかったら、面接でなんて答えたらいいんですか?」と。

 しかし、実はこうした戸惑った答えの中に、すでに就職活動に失敗する要因が含まれているのだ。


 もちろん、最低限の自己分析は必要だ。自分がどこの大学の何学部出身で、専攻は何で大学時代に打ち込んだことや長所は何かなど、それぐらいはすぐに答え られるようにしておかなければならない。むしろその程度のことは、「自己分析」と呼ぶまでもなく、至極当然の、本当にごく最低限のこととしてやっておかな ければならないことなのだ。


 著者が批判するのは、そのさらに先のアピールを、「自己分析」に求めることである。学生たちにとっては辛らつな記述かもしれないが、著者に言わせれば、 たかだが20数年しか生きていない学生の人生など、振り返って「自己分析」したところで、さして深みのある話など出てこようはずもない。ましてや一般的な 大学に進学した者ならば、どうせ似たり寄ったりの話しか出てこないはずである(「サークルでは〜」「ゼミの活動は〜」「海外旅行に行って〜」というよう に)。


 深みのないアピールしかできない「自己分析」なら、そのような無駄な作業を直ちにやめて、むしろ、他の人にはない自分にしかない個性を磨くような行動に 直ちに移るべきであるというのが著者の主張の根幹だ。それが「脱マニュアル」の「戦略型就活」なのだという。そのための具体的なヒントが本書にはわかりや すくちりばめられている。


 詳細は本書を読んでほしいが、グローバル化が進み、日本社会にも海外からの人材流入がますます進む中、普通の大学生活を送っただけで内定がもらえるような時代ではもはやない。


 本書は、就職活動の第二歩目(イントロのマニュアル本の次)ぐらいに読むことをぜひお勧めしたい一冊である。



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