2010年8月3日火曜日

asahi shohyo 書評

劇的な人生こそ真実—私が逢(あ)った昭和の異才たち [著]萩原朔美

[掲載]2010年8月1日

  森鴎外と萩原朔太郎の娘同士が際限なくおしゃべりしている台所の隅を不機嫌な顔で通り過ぎる少年だった著者は、朔太郎の孫。長じて寺山修司の「演劇実験 室・天井桟敷」で演出家になり、世間に出てゆく。森茉莉や寺山、沼正三、土方巽ほか、著者が影響を受けた物故者7人との出会い、自分もかかわって間近に見 たもろもろの事件をつづる。とんでもなく破天荒な人々の、濃い人生を語る著者も、単なる狂言回しの役どころには甘んじない。一生懸命対抗しようとした姿を 振り返っての感慨はすがすがしい。母の再婚話に今さら気づくなど、ご愛敬だ。書き下ろし。

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