結局、どうして面白いのか—「水曜どうでしょう」のしくみ [著]佐々木玲仁
[文]トミヤマユキコ [掲載]2012年12月14日
著者は九州大学大学院で教鞭をとる臨床心理学の研究者。本書では、北海道発の人気バラエティ番組「水曜どうでしょう」の内容分析を試みている。同 番組は、出演陣2名、制作陣2名、計4名の男たちが行き当たりばったりの旅をするのがウリ。出演陣のやりとりだけでなく、制作陣が普通にしゃべり、フレー ムインしてくるのも見どころのひとつだ。出演/制作を分けることなく、4人のファンという視聴者も多い。
このユルい番組に、おカタい職業の著者 が挑むという組み合わせが面白い。制作陣へのインタビューを通じて明らかにされるのは、番組を作りつつ番組に出てきてしまう彼らの特殊性。タレントによる 旅企画の遂行という既定の「物語」の外に「何かある」と感じさせることで、狭苦しいレンタカーに男がすし詰めだったり、車窓の風景がイマイチでも、全く飽 きない。そして視聴者が「いるけど見えない、見えないけどいるという霊の立場」で旅に参加し、思い出を共有しているという指摘には、噴き出しながらも納得 してしまった。
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著者:佐々木玲仁/ 出版社:フィルムアート社/ 価格:¥1,890/ 発売時期: 2012年09月
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