江戸の読書会 会読の思想史 [著]前田勉
[評者]出久根達郎(作家) [掲載]2012年12月02日 [ジャンル]教育
■会読で、学校教育の閉塞打破を
江戸時代の子どもは、六、七歳頃(ごろ)から勉強させられ た。武家は藩校や私塾へ、庶民は手習い塾の寺子屋へ通う。どちらも最初は素読(そどく)といって、師の読む通りを声に出して読む。次に暗誦(あんしょう) する。この段階で大切なことは、子どもたちが本を嫌いにならぬよう、テキスト選びに注意する。
武士の子は十五歳前後から、講釈と会読(かいど く)を行う。会読は大体十人ほどが一グループとなり、クジでその日の講者を決め、前から指定されているテキストを読んで講義する。他の者は疑義を質問し、 講者が答える。全員が予習をしないと成立しない勉強法である。先生は口を出さない。どうしても答えが出ない時や、対立した際に判定を下す。会読は活発な討 論の場であった。子どもたちは、いろんな意見や考えがあることを学んだ。
明治以降の学校教育は画一的になった。著者は会読の伝統継承が、現代の閉塞(へいそく)状況を打破することにつながらないかと提案する。望ましい政治家を育てるためには必要か。
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平凡社選書・3360円
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著者:前田勉/ 出版社:平凡社/ 価格:¥3,360/ 発売時期: 2012年10月
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