2012年4月26日木曜日

asahi shohyo 書評

右利きのヘビ仮説 追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 [著]細将貴

[評者]川端裕人(作家)  [掲載]2012年04月22日   [ジャンル]科学・生物 

表紙画像 著者:細雅貴  出版社:東海大学出版会 価格:¥ 2,100

■若き研究者、人間臭い「冒険書」

 この世に「右利きのヘビ」なるものが存在して、右巻きのカ タツムリ食に特化しているようだ。カタツムリの大多数は右巻きであり理にかなっているが、右利きヘビの存在は、期せずして、少数派の左巻きカタツムリの登 場をアシストしたかもしれない、等々。何重にも「びっくり」な仮説を、大学の学部時代に思いついてしまい、遠く「旅」をして実証するまでを語る。
  まさに冒険の旅だ。行動生態学に軸足を置きつつ、解剖学(カタツムリ食のヘビで、下顎(あご)の歯の数が左右で違うことを発見)、沖縄のフィールドでのヘ ビ採集、屋内での捕食実験、生物統計学を駆使しての論文執筆と進む。白眉(はくび)は、苦労のすえ採集した「右利きのヘビ」が「左巻き」のカタツムリを捕 食できないことを実験で示し、大風呂敷な仮説を裏付ける部分か。
 フィールドでの工夫、論文投稿の苦労、大学院生の不安等々、過剰なまでの情報が自然に詰め込まれており、人間臭い「冒険書」となっている。
    ◇
 東海大学出版会・2100円

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