2012年9月20日木曜日

asahi shohyo 書評

「水中考古学」のわくわく感を一冊に

[文]津布楽洋一  [掲載]2012年09月17日

水中考古学の魅力を知ってもらうと基本テキストを出版した井上たかひこさん 拡大画像を見る
水中考古学の魅力を知ってもらうと基本テキストを出版した井上たかひこさん

表紙画像 著者:井上たかひこ  出版社:成山堂書店 価格:¥ 2,730

 難破船や水没した都市などの発掘調査をする「水中考古学」。まだ歴史の浅いこの学問の魅力を広く知ってもらおうと、茨城県大洗町に住む水中考古学者、井上たかひこさん(69)が、基本からわかるテキスト「水中考古学のABC」(成山堂書店)を出版した。
  井上さんは日立市出身。海を遊び場に育ち、海洋冒険小説の「宝島」に心をときめかせる少年だった。大学卒業後はサラリーマン生活を送っていたが、40代半 ばで水中考古学の本に出会い、留学を決意。米国で「水中考古学の父」とよばれるジョージ・バス氏に師事した。地中海の難破船やジャマイカの海底都市などの 調査にも加わった。
 日本でも元寇船発掘に参加。茨城大非常勤講師などを務め、今は千葉県勝浦市沖で戊辰戦争のときに沈んだ米国の蒸気船「ハーマン号」の調査に取り組んでいる。
 水中考古学は、最近になって東京海洋大学や東海大学に講座が開かれ、日本でも学べる環境が出来てきた。しかし、「総合的にまとめた概説書がない」と考えた井上さんが、2年前から執筆していた。
 本はA5判208ページ。水中考古学の歴史から、実際の調査発掘の方法、遺物保存処理方法、国内外の取り組み事例などを紹介。井上さんのもとに「水中考古学者になるにはどうしたらよいか」といった若者からの相談が寄せられていたため、水中考古学の学び方も書いた。
 水中にある遺跡は水に守られて、手つかずのまま保存状態がよいケースもあるという。水中考古学の一番の魅力について、井上さんは「わくわく感ですね。冒険性に富む世界にわくわくする気持ちは、子供のころから変わらない」と笑顔で語る。

この記事に関する関連書籍

水中考古学のABC

著者:井上たかひこ/ 出版社:成山堂書店/ 価格:¥2,730/ 発売時期: 2012年06月

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