山の単語帳 田部井淳子さん
[文]大上朝美 [掲載]2012年09月16日
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■その場でお話しするように
登山にまつわる言葉を、そのものずばりの写真(撮影・栗田貞多 夫)とともに説明する。ガレ場、コル、ブロッケン、あるいは動植物や気象……。「なじみがなくてわからない言葉も、山で、その場所で説明するとわかっても らえる。そんな本にしたいと思いました。写真がすばらしいんです」。飾りのない笑顔は、テレビで見る田部井さんそのままだ。
女性では世界で初め てエベレストの頂に立ち、世界7大陸最高峰も踏破と、登山家としての業績は輝かしい。「長い登山経験の中でもうだめか、と思ったことが3度あり、そのすべ てが雪崩でした」と、「雪崩」の説明に。さりげなく書かれているが、2度で懲りなかったのか、と驚く。記述は体験に基づいている。
長い間、山は 男の世界とされた。女性登山家の先達の名を幾人も挙げて、「私はいい時代に生まれた」と語る。エベレスト登頂は35歳の時。技術・体力とも申し分なく、社 会にも抵抗は少なかった。60歳を過ぎてからは、夫や子どもの予定に縛られず山行を決められる。いまは月1回の東北応援登山も含め、年に100日以上を山 で過ごすそうだ。
「同じ山でも季節、時間帯、天候によって行くたびに違う。常に新しい」。魅力の一端だ。一方で、「自分の身の程を知るのが山では大事」と、田部井さんにしてこの言葉。
「山ガールの遭難は少ないでしょう。勉強熱心で準備もよく、慎重。ガツガツしてない」。遭難が多いといわれる中高年もそう心がけたい。
山から戻ると写真を見て、また行きたくなる。「この本で、あぁ行きたいなと思って下さるとうれしいですね」
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世界文化社・1890円
この記事に関する関連書籍
著者:田部井淳子、栗田貞多男/ 出版社:世界文化社/ 価格:¥1,890/ 発売時期: 2012年08月
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