2012年3月7日水曜日

asahi shohyo 書評

考えるとはどういうことか [著]外山滋比古

[評者]石川直樹(写真家・作家)  [掲載]2012年03月04日   [ジャンル]教育 人文 

表紙画像 著者:外山滋比古  出版社:集英社インターナショナル 価格:¥ 1,050

■「知っているつもり」を覆す

 取っつきにくいテーマをわかりやすくコンパクトに伝えるという コンセプトで生まれた「知のトレッキング」叢書(そうしょ)の第一弾である。『思考の整理学』で知られる著者が、編集者との対話をもとに、示唆に富んだ自 由な思考を繰り広げる。六つのテーマで構成されているが、特に前半の球面思考や触媒思考の話が面白い。文法では認められていない第四人称に関する話や、こ とわざと川柳などをはじめとする言語からのアプローチは、英語雑誌の編集長を務めていた著者らしい指摘で、目から鱗(うろこ)の小さな発見をいくつも得る ことができる。
 この本が読みやすいのは、具体的な例やエピソードに溢(あふ)れているからだろう。結論めいたことはない代わりに、考えるとはど ういうことか、という書名への答えを、著者自身の全身の思考によって体現している。知っているつもりになっていたことを一から覆していく奇跡のおしゃべり を読者はそばで聞いている、そんな本である。
    ◇
 集英社インターナショナル・1050円

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