里山のきのこ [著]本田尚子
[文]北澤憲昭(美術評論家) [掲載]2012年11月04日
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そんな建物が戦後まもなく爆心地近くに建ったことは意外だが、だいたい、きのこ というやつは、思いもかけないところに、ひょっこり生えているものだ。その姿は、異星人のようなおもむきで、ほっくりした身にさまざまな色彩をまとってい る。どこかユーモラスで、奇妙でもある。きのこの研究でも知られるジョン・ケージが、エリック・サティの風変わりな音楽を、きのこにたとえたのもうなずけ るというものだ。
そんなきのこのあれこれを、すてきなイラストにした本書は、秋の夜長の慰めとしてもってこいだ。里山というロケーションも悪くない。こころやすらぐ。
著者は、国立科学博物館主催の植物画コンクールに10回も入選を果たしたボタニカルアートの名手で、2004年には文部科学大臣賞を受けている。この本 は、だから、たのしいばかりの一冊ではない。うつくしいきのこに、食べておいしいものがあるように、本書は、きのこを見分ける手引としても役に立つ。
たくみに線を生かしたイラストは、写真よりも、ずっとたくさん真を伝えているかに見える。
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幻冬舎ルネッサンス・1890円
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