ネジと人工衛星 世界一の工場町を歩く [著]塩野米松
[文]笠間直穂子 [掲載]2012年11月23日
東大阪市高井田地域は、日本でもっとも工場が密集している町。九割方が従業員20名以下の小さな工場だ。スプリングやネジ、プラスチック製品の成 形に欠かせない金型など、私たちの生活を支える物の数々がここで生み出されている。本書は、聞き書きの名手として知られる著者が13社を訪ね、工場主たち の話をまとめたもの。それぞれどんな物を、どうやって作っているのか。時代によって変わったこと、変わらないことは何か。飾らない語り口から、工場町のい まが見えてくる。
まず、各社の製品にまつわる話が面白い。たとえばバネはどんな機械にも入っている上に消耗品だから、技術さえあれば注文がつづ く分野だという。そう聞けば、小さな部品を見る目も変わる。ミクロン単位の金属表面処理から鉄道・航空機部品まで、工業製品とはいえ生身の人間が考え、工 夫し、技を磨いて作る。機械化が進んでも「最終的には人の加減」。よい品を納めて信頼を得てきた誇りがあるから、「おっちゃん」たちの言葉は背筋が通って いる。学ぶべきことは多い。
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著者:塩野米松/ 出版社:文藝春秋/ 価格:¥809/ 発売時期: 2012年09月
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