2012年11月15日木曜日

asahi shohyo 書評

テレビの金持ち目線─「生活保護」を叩いて得をするのは誰か [著]和田秀樹

[文]青木るえか  [掲載]2012年11月16日

表紙画像 著者:和田秀樹  出版社:ベストセラーズ 価格:¥ 820

■生活保護バッシングってブキミじゃない?

 生活保護バッシングがこの頃盛んである。マトモに 働きもしないで生活保護もらってパチンコやって遊んでる社会のクズ、あるいはうつ病とか称してマトモに働かず会社休んで周りに迷惑かけてる社会のクズ、な どの撲滅が叫ばれている。和田さんは、それに対して「ちがいます」とはっきり書いている。生活保護バッシングすることが結局は暮らしづらい世の中にしちゃ うことなんですよ、と。私は和田さんの本を初めて読むのですが、見た目だけで「東大医学部卒でちょっと顔がいいチャラチャラしたマスコミ医者」と思ってい たことを反省します。内容については何も言うことがない。
 気になるのは、本のタイトルを見て「あ、これは生活保護バッシングについて批判する本 だな」とわかって、その批判を読みたくて手に取る人がどれぐらいいるのか、ということだ。読んで「ほんとになー、生活保護批判て、いつ自分がそれをもらう 立場になるかもわからんのに」と思う人がどれだけいるか。あるいは「ああそうか、確かに生活保護批判とかしてる場合じゃねえわ」と思う人がどれだけいる か。
 なんでそんなことを言うかというと、これが20年ぐらい前だったら、この本に書いてあることは常識と考えられていた気がするからだ。昔もそ れなりに生活保護とか、国が個人に対して保護や支援をすることに文句をつける人はいた。しかし文句つけつつも「こりゃ通らねえよなー」という半笑いのよう なものがあったと思う。今はどうも、その頃のソレとは雰囲気が明らかに違っていて、マジで「生活保護撤廃!」が世界の正義だと思い込んでいる人数が増えて いるようで、ブキミだ。
 和田さんは「生活保護についての誤った情報を大きな声で言っているのは誰か?」と問うているが、それを読んで和田さんを 「陰謀論を語る男」扱いする人間がいるだろう。その数は千人なのか一万人なのか十万人なのか。まったく想像もつかない。あんまり知りたくない気もするが。

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著者:和田秀樹/ 出版社:ベストセラーズ/ 価格:¥820/ 発売時期: 2012年09月

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