大森実伝 アメリカと闘った男 [著]小倉孝保
[評者]上丸洋一(本社編集委員)
[掲載]2011年4月3日
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■ベトナム戦争報道、現代に問う
1965年9月、毎日新聞外信部長の大森実(2010年死去)は、ベトナム戦争下のハノイに入った。大森は、米軍の激しい爆撃によってハンセン病の病院が 壊滅的な損害を受けた、との原稿を書き送り、同紙に大きく掲載された。大森は、北ベトナム政府が作成した記録映画を見て原稿を書き、その点を記事に明記し た。
駐日米国大使のライシャワーは記者会見で「事実に反している」と述べて大森を名指しで非難。大森は翌年1月、毎日を退社した。
著者は毎日新聞外信部記者。問題となったハンセン病院を45年ぶりに訪ねて、爆撃が事実だったことを確認する。「病気の重い人は逃げられず、何も抵抗できないまま無惨にも亡くなりました」と当時を知る患者が証言した。
ライシャワー発言の後、毎日新聞社内でどんな議論があったのだろうか。報道における「中立」とは何か、「偏向」とは何か。さらに掘り下げたいテーマだ。
- 大森実伝 アメリカと闘った男
著者:小倉 孝保
出版社:毎日新聞社 価格:¥ 1,680
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