街場の憂国論 [著]内田樹
[文]永江朗 [掲載]2013年11月01日
■内田樹人気を考える
書店観察が好きなぼくにとって、晶文社の本はひとつの指標だった。晶文 社の本がどう置かれているかで、書店の性格がわかる。しかしこのところ晶文社の元気がなかった。冬眠とまではいわないが、昼寝している感じ。それが最近、 目を覚ました。「犀の教室」なんていう、晶文社らしいシリーズも始まった。
第1弾、鷲田清一『パラレルな知性』とともに刊行されたのが内田樹『街場の憂国論』だ。他の多くのウチダ本と同じく、著者がブログはじめあちこちに書いた文章を編集者が集めて1冊にした。内田センセ、国を憂えておられるのである。
内田樹はなぜ人気があるのか。その理由は、まえがきに書いてある。いや、「だからオレは人気がある」とは書いてないけど。
内田はあるときから「他の人があまり言わないこと」だけを書くようになったという。その理由のひとつは仕事を減らすため。原稿を読んだデスク(編集部の現 場監督)が拒絶するような原稿を書けば仕事が減るだろうと考えた。ところが意に反して原稿は好意的に受け止められ、センセますます商売繁盛。
どうしてそんなことが?
「他の人があまり言わないこと」を書くと、意外にもリーダー・フレンドリーになるのでは、と内田は推測している。聞いたこともないような意見を伝えるためには、ちゃんとわかりやすく説明しなければならない。しかも最後まで聞いてもらうためには、そのための工夫も必要だ。
対極にあるのがネットの匿名発言だ。誰でも言いそうなことを(下品な言葉遣いで)書き飛ばしているのだけど、凡庸なので発言者は誰とでも交換可能だ。
本書の中に、情報の格差について述べている部分がある。情報リテラシーとは、情報についての情報を把握できること。持っている情報と持っていない情報について判断できること。ないものについて思いを巡らせることだ。
この記事に関する関連書籍
著者:内田樹/ 出版社:晶文社/ 価格:¥1,785/ 発売時期: 2013年10月
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