2013年10月1日火曜日

asahi shohyo 書評

「山月記」はなぜ国民教材となったのか [著]佐野幹

[評者]川端裕人(作家)  [掲載]2013年09月29日   [ジャンル]文芸 人文 

表紙画像 著者:佐野幹  出版社:大修館書店 価格:¥ 2,310

■教科書とは何か、問い直す

 戦後高校に通ったほとんどの者が中島敦「山月記」を教材に国語の 授業を受けた。教科書の最多掲載回数を誇り「国民教材」とまで呼ばれるそうだ。しかし教員である著者は、授業をしつつ「ふと、今、自分が何をしているのか 分からなくなる瞬間」があるという。その違和感を追い、1951年以降の203の教科書や、教師用「学習の手引き」を精査、時代ごとに作品がどう教えられ てきたか炙(あぶ)り出す。
 80年代に高校教育を受けた評者の記憶では、「李徴が虎になった理由」を問われ「人間性の欠如」を一つの解として与 えられた。これは、主題の読解を目的とした教授法として一時代を築き、同時に大いに批判に晒(さら)されたものであるという。確かに本来の「古譚(こた ん)」4作品の一つとして「山月記」を読めば唐突な解釈だ。それなのに教育現場で受け入れられた理由は……。
 教育とは何か、教科書とは何か問い直す機会となる好著。
    ◇
 大修館書店・2310円



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